都内62自治体の電力調達の状況に関する調査についてのご報告。
東京・生活者ネットワークは、今年2月から4月にかけて、パワーシフト・キャンペーン運営委員会(事務局:国際環境NGO FoE Japan)、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンと共に都内62自治体の「自治体の電力調達の状況に関する調査」を行い、全自治体から回答を得た。7月9日には都庁記者クラブで調査結果について記者発表、8月5日にはオンラインによる報告セミナーを実施した。報告セミナーには192人が参加、関心の高さがうかがわれた。
電力システム改革や電力小売全面自由化を機に、全国に多数の新電力会社発足など、電力小売をめぐる状況は大きく変化した。東京都では原発事故の翌年以降、新電力から調達する基礎自治体が増え、電力自由化が始まった2016年には62自治体の内25が新電力に切り替えるに至った。しかし、その後大手電力による巻き返しが起こっている。
再生可能エネルギーの推進を政策に掲げる東京・生活者ネットワークとしては、本調査によってそれぞれの自治体の電力調達の現状と今後の方針を確認し、それを機に自治体の再生可能エネルギー利用を促すことを目的とした。
調査の結果、7割以上の自治体が電力環境配慮調達に関して何らかの取り組みを行っていることがわかったが、それが必ずしも再生可能エネルギーエネルギー調達にはつながっていないのが現状だ。何故なら多くは国から示される基本方針を参考に自治体方針を策定しているにとどまっているからだ。
その中で世田谷区、江戸川区は、再生可能エネルギー割合を高く評価する独自の環境評価を導入。また、港区では他地域の自治体と連携して再生可能エネルギー調達を行うなど、今後各自治体へ提案する際の参考になる事例もいくつか見ることができた。さらに今後は再生可能エネルギーの中味にも着目していく必要がある。近年例えばバイオマス発電で、パーム油やパーム椰子種子殻、輸入木質ペレットなど、燃料調達段階での環境負荷の問題と思われる例もあるからだ。
品川区では「品川区環境基本計画」で、CO2削減目標を国の目標よりも高い設定(2030年に2013年度比40%削減)とし、実現のための重点政策に「区施設への再生可能エネルギー導入」を掲げている点は評価できる。具体策として2019年度に障害児者総合支援施設へ再生可能エネルギー100%の電力を導入、2020年には区の第二庁舎や品川歴史館、月見橋の家在宅サービスセンターと大井在宅サービスセンターも再生可能エネルギー100%の電力に切り替えた。品川・生活者ネットワークとしては環境基本計画と重点政策の推進を促しつつ、今後はエネルギーの中身も点検していこうと考えている。
自治体は電力消費の規模も大きく、その調達方針は電力市場の方向性に影響を与える。各自治体の再生可能エネルギー活用を促すことで東京・生活者ネットワーク全体としての政策実現を目指す考えだ。(よしだ・ゆみこ)