消費を通じた社会運動から社会変革へ 市民立風車「夢風」と「風車の里セット」

市民風車建設を機に、安全でおいしい食の産直も本格化。「風車の里セット」

首都圏住民が実践するエネルギー改革。生活クラブ首都圏4単協(東京・神奈川・埼玉・千葉)の組合員と秋田県にかほ市の市民など、おおぜいの市民の知恵と力を集めて建設した「生活クラブ風車」

 「生活クラブ風車の里からセット」が届いた! 手に取って思わず頬が緩む。私たちにとっての「風車の里」とは、秋田県にかほ市のことだ。ここに生活クラブの風車「夢風」が建っている。夢風は首都圏4つの生活クラブ(東京・神奈川・埼玉・千葉)が協力して立ち上げた。

生活クラブ東京は、第4次長期計画(20092013)で脱原発、そして原発への対案として再生可能エネルギーに取り組むことを提案し、「夢風」建設をその実現の一つのモデルとして位置づけた。私は生活クラブ東京の理事長として、そして環境政策の担当理事として、構想から計画、建設まで夢風に携わった。

風車の建設を最初に提案したときから、組合員の中にはさまざまな議論が巻き起こった。折りしも風車についての逆風が吹き荒れているときでもあった。しかし、この計画を推進する中心メンバーの中には「脱原発に向けて、市民が対案を示す」重要性への確固たる信念があった。その背景はもちろん、原発への強い危機感である。まだ、2010年頃…つまり東日本大震災による原発事故の前だった。

何度も学習会を開き、委員会や理事会での議論を重ねて少しずつ共感を広げていった。様々な議論の中に、今回の「生活クラブ風車の里からセット」につながる議論があった。曰く「秋田に建てた風車の電気を東京で使うのであれば、原発と同じ『エネルギー泥棒』ではないか?」

形だけ見ればそう見えるかもしれない、と思った。しかし、本質は全然違う。生活クラブが風車を建てるからには、その特性を生かしたものにしていきたいと考えた。札束で頬を叩くような原発建設に対して、私たちは風車建設を人の交流や産物の交流につなげ、持続的な地域発展につなげていくようにしていきたいと考えたのだ。

また、秋田県にかほ市というところは、早い時期から「風」をエネルギー資源と考えて、風車建設に積極的な政策を持っているところであり、私たちはその政策を推進することも都市に住む人間としての役割だとも考えた。例えば「食」についても、現在の東京で都内での完全な地産地消は難しい。とくに品川は、生産農地ゼロ、それが現実だ。そうであるならば、考え方を共有できる生産者と提携し、その生産地の地域発展につながるような消費のあり方を、と実践しているのが生活クラブだ。だとしたらエネルギーもそういう考え方が出来るのではないか?

考えているだけでは意味がないし、みんなに伝わらない。さっそく組合員が風車を見に行く機会をつくったり、にかほの産物を購入する模索を始めた。生活クラブのお店限定の取り扱いも始めた。にかほ市に生活クラブの食への考え方も理解してもらいながら、可能なところから少しずつ始めていった。

「今年はこういう形になったのだな」申込用紙に「生活クラブ風車の里セット」を見つけた時、そう思って迷わず「1」と書いたのだ。朝の駅頭遊説で「エネルギーの地産地消」を訴えている私。私の中にはこの実践からくる地産地消のイメージがしっかりあるのだが、まだきちんと伝える言葉を獲得していないのがもどかしい。まずは、風車の里セットのことを話題にしながら、身近な人との議論から始めていくのが、今の私の役割だと思っている。<よしだ・ゆみこ>