覚えていますか?防災対策のための特別区民税増税
前回に続いて、決算特別委員会のご報告をする。
決算委員会初日の「歳入」の審査の日、前回ご報告した繰越金の問題とともに「防災対策のための特別区民税の増税」について質問をした。
皆さんは、2014年から、住民税の均等割の税率に特別区民税500円が加算されたことを覚えておられるだろうか。これは、2012年度から2015年度までの防災事業に充てるため、2014年度から2023年度まで月額500円を集めるという趣旨の「増税」ということだ。
この件が審査された2012年6月の総務委員会では、委員からかなりの懸念が示された。目的を持った増税ということであっても一般財源に入ってしまうので、本当に目的通りに使われているかはわかりにくいというのが主に出された疑問点だった。4年間の事業に対してそれが終わった後も8年間集め続けるというのもわかりにくい点だ。
これらの懸念に対し、当時の総務委員会では企画財政課長が「区民に対して、どういう形で防災対策に区の財源が使われているかということを明確に示す必要がある」と答弁している。ところが当初目的とした2015年の事業が終わり、今に至るまでにその明確な説明はなされていない。これは、委員会での答弁が実行されていないということであり、説明の意思を質した。区民に対しては「広報しながわ」で知らせたということだったが、これは事業を始めることの告知であり、十分な説明には程遠い。議会への説明もまだ行われていない。
また、2012年に審議された段階では、10年間の人口動向を予測したうえで、10億円程度の増収を見込んでいたが、その後の人口動向は当時の区の予測を上回っており、収入はもっと多くなるはずだ。一方で事業は2015年まで、と区切られているのでもう終わっているわけだ。すでに終わっている事業の経費と、当初見込みを上回るはずの増税分の額に齟齬は無いのか?もし、予定していた事業経費よりも増税分の税収額が上回るのであれば、事業経費相当額が集まった時点で集めるのをやめるべきではないか、という趣旨の質問を行った。
答弁は、「これは、別に特定の財源でもないので、多くなったからその分で何をするかということではなく、防災関係の対策の費用の中で、これを一般財源として使用するということ。2014年度決算でも、56億円という防災経費を使っているので、そういう中で一般財源として使っていると理解いただきたい」というものだった。つまり、2012年に増税を考えた時、特に「これこれの事業」に充てると決めたわけではなく、「防災事業全体」のために増税したということだ。非常にざっくりとした考え方で区民に負担増を求めたということで、有効に使われたかどうかの点検もしにくい。審議をした総務委員会での懸念も、まさにその辺にあったと思われる。
目的を掲げながら、色分けせずに一般財源に入れるような増税は疑問がある。区は常にも増してわかりやすい説明をすべきであり、今後どのような説明がされるか注視していきたい。(よしだ・ゆみこ)