やっぱり品川上空低空飛行はあり得ない~第2回定例議会報告①
昨年の区民とのタウンミーティングで区長が「品川区民にとってはデメリットしかない」と明言した羽田新ルートによる品川上空低空飛行問題は、9月の区長選を控えて議会各会派の動きも微妙に変化してきた。6月29日の一般質問では自民と公明の議員の質問にも取り上げられ、自民党石田議員からは「(新低空飛行計画が、)現時点で理解を得ているとは言えない。国の対応策が今後示されないなら、(地域のかたたちに理解してもらうために)区長から現行計画の見直しも辞さないと国にぶつけよ」という発言があり、公明党のあくつ議員は「様々な危険が指摘される中で日本有数の人口密集地である品川区上空を低高度で大型飛行機が飛ぶことは容認できない」と明言。区民の粘り強い反対運動の前に、「あくまで国の問題」と傍観者の態度をとり続けるわけにいかなくなったのだろう。
しかし、7月2日の建設委員会で審査された「都心・品川上空新飛行ルートの撤回を国交省に求める請願」については自民2名、公明、国民民主の計4名の議員が反対、3対4で不採択となった。不採択の理由が請願項目に「都心・品川低空飛行ルートを撤回してください。」とあり、品川区が飛行計画を進めているのではないので不適切であるというものだ。しかし、題名が「…国交省に求める請願」となっており、請願の趣旨は明白だ。請願項目の表現に瑕疵があったとしても少なくとも趣旨採択されるのが妥当ではないか。一般質問でこの問題に言及した議員の真意が透けて見えるようだった。
私も今回一般質問に立ったが、当然質問の一つとしてこの問題取り上げた。いつもと切り口を変えて「国策としての国際競争力強化策の中で、品川上空ルートが果たして有効か?」という視点で質問を組み立てた。昨年のタウンミーティングで区長が「品川区民にはデメリットしかないが国策である以上甘受する。」と発言したことを受けてのことだ。
少し長くなるが以下、質問の視点を要約する。
政府・国土交通省は、今後羽田と成田をあわせて現状の離着陸能力の年間値74.7万回を2020年までに8万回、それ以降さらに16万回、併せて24万回増やして約100万回近くまで持っていくと、2018年1月、施政方針演説で発表した。2020年までの8万回増の内訳は、羽田で3.9万回、成田4万回プラスアルファだが、その後の16万回増の内訳は全て成田であることが公表されている。すなわち、現状では羽田44.7万回、成田30万回、トータルで74.7万回を最終的に24万回増やしたいが、その増加分の内訳は、羽田3.9万回、成田約20.1万回となり、増分全体を100%とすれば、羽田約16.25%、成田83.75%となり圧倒的に成田頼みである。
さらに羽田3.9万回増の内訳を掘り下げると以下のようになる。
2014年7月発表の首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間の取りまとめによると、1、離着陸ルートを何も変更しなくてもD滑走路供用後を再検証した結果、1.3万回増える。2、北風時の荒川北上ルートを採用するだけで、1に加えて最大1.5万回増える。3、南風時に都心の真ん中を低空で貫いての着陸と川崎重工業地帯へ離陸するルートを採用して、さらに1.1万回増える。したがって、品川区上空をまともに通る都心低空ルートは1.1万回増の効果しかなく、3.9万回の羽田全体増に占める割合は28.2%だ。成田を含めた全体で24万回の増加計画から見れば、4.6%しか貢献しない。
国土交通省は、今回の羽田増便で増やす3.9万回を全て国際線に振り向け、現状の国際線6万回から9.9万回へ最大約1.65倍に増やせると言っているが、これは数字のレトリックだ。考えるべきは羽田空港機能強化であり、3.9万回を全て国際線に振り向けても羽田機能強化で言えば、現状比8.7%増であり、抜本的な増強にはならない。しかも、3.9万回のうち2.8万回は品川新ルートなしでも増やせる。騒音、落下物、不動産価値下落、排気環境汚染、万一の事故の甚大な被害リスクなど都心特有のさまざまな懸念が想定される中、世界の潮流にも反したルート選択を行うのは政策として合理的な貢献効果があるとは思えない。」
以上をふまえて、「国策を支える立場に立って考えても、新ルートの採用が区民へのデメリットの割には増便貢献効果の低いものであると言わざるを得ないのではないか。観光立国化や国際競争力強化の国策への協力を前提にしても、区としては不合理をとなえ、より理にかなった新ルート計画を求めて国に見直しを働きかけるのがあるべきスタンスと考えるが、見解はどうか。」と質問をした。
答弁は「区の見解」を訊いたにも関わらず、「国は、羽田と成田はともに重要な役割を果たしており、その役割や機能を最大限生かしながら、今後の需要に対応していくことが必要と言っている」というもの。結局、国が評価しているから丸ごと受け入れるということか?
しかし一方で落下物への懸念に触れ、国の発表した「落下物対策総合パッケージ」の内容を「未然防止策と万が一事案が発生した場合の事後の対策の強化」であると説明し「区としては(落下物事故は)万が一にも発生しないことが必要不可欠と捉えている」と見解を述べた。しかし、国交省はすでに「落下物リスクはゼロに出来ない」と明言している。万が一にも発生しないことを必要不可欠とするなら、解決策は「飛ばさない」ことしかありえない。区は自らの発言に責任を持って、明確に国に対して現状の海上ルート維持を主張すべきだ。(よしだ・ゆみこ)