大義なき臨時会招集請求。何のための臨時議会か!?~臨時議会報告

8月24日に開かれた品川区臨時議会。請願採択に対して反対討論を行う吉田ゆみこ

本日8月24日、品川区議会臨時議会が開催された。品川区にとって極めて異例なことである。それに先立つ8月17日に臨時の議会運営委員会が招集された。そこで議題に上がったのは「『品川区長選挙と品川区議会議員一般選挙の同日開催を求める請願』が提出されたため、審査の必要がある。そのため臨時議会の開催を求めたい」というもの。

議会運営委員会での議論では、「請願は通常の手続き通り、第三回定例議会で審査すればよいのでは?」など、臨時議会の開催に慎重な意見も出されたが、一方で、もし同日開催を今年の9月に予定されている区長選で実施することを想定すると緊急に議会を開いて請願審査を行わなければならない、という意見もあり結局は開催に賛成する議員10名の連名による「臨時議会招集請求書」が出され、ルール通りの手続きに則って区長により臨時議会が招集された。審査する事項は「品川区長選挙と品川区議会議員一般選挙の同日開催を求める請願」一本。

そして、本日の臨時議会開催となった。

請願は臨時議会の冒頭で議会運営委員会に付託され、本会議をいったん休憩として議会運営委員会で詳細の審査が行われた。そこでは自民党・子ども未来と国民民主の委員6名が採択を主張。共産と公明の委員6名が不採択を主張。最後に委員長採決で委員会では採択となった。

品川・生活者ネットワークとしては2つの選挙が短期間に2度に分けて実施されることについては「同日実施が望ましい」とは思う。しかし、それを決める前に議論しなければならないことがあるはずだ。

今、区長選と区議会議員選挙が同日でないのは、2006年前区長の急逝を受けて急きょ実施されたためだ。しかし、区長が任期前に辞任する理由は他にもある。その都度区議選の日程を変えて同日開催にしていくのか?今の「区長選7か月後の区議会議員選挙」は間が短すぎると言うなら、10か月だったらどうなのか?議会運営委員会では「一年、二年とずれているなら致し方ないが半年では短すぎる」という意見も出されたが、まさに議論すべきはその点だ。その議論を置き去りにしたまま今回出された請願の願意に添うか否かの審査を臨時議会を開いてまで行うのはあまりに拙速だ。まして、「間近に迫っている来月の区長選で同日選挙にするとしたら…」というのは仮定の話としても乱暴に過ぎる。

品川・生活者ネットワークとしては「請願の趣旨は理解できるが現時点では不採択が妥当」と判断した。品川・生活者ネットワークは議会運営委員会には参加の権利が無く意見を言うことが出来ない。本会議で反対討論を行ったが、本会議での採決でも賛成多数で採択となった。

その後、「品川区長選挙および品川区議会議員の一般選挙に関する決議」が提出され即日採決となった。こちらは「(選挙の)同日実施を課題とし、選挙のあり方について長期的な視野からの十分な議論を推進する」という内容で趣旨は良いのだが、拙速な請願審査を行うためだけに開かれた臨時議会の中で「緊急を要する案件」として決議する内容ではないと判断して反対討論を行い反対を主張した。しかし、こちらも賛成多数で決まってしまった。

請願審査が終わってみれば、この結論を得るために臨時議会まで開く必要があったのか?というような結果であり徒労感ばかりが残った。議会の1/4の議員による賛同があれば臨時議会の招集を求められることは議員の権利として認められていることだが、今回の臨時議会については、この権利を活用して開催を求めるほどの大義があったとは到底思えないものだった。

それぞれの反対討論は次の通り。

区長選と区議会議員選挙の同日実施に関する請願への反対討論

品川生活者ネットワークを代表して、請願第14号「品川区長選挙と品川区議会議員一般選挙の同日開催を求める請願」に反対の立場で討論します。

本請願は、2006年高橋前区長の急逝によって、同日に実施されなくなった区長選挙と区議会議員選挙を一度に実施してほしいと要望するものです。理由には選挙執行費の削減や投票者の利便性向上、投票率アップなどが挙げられています。

区長選と区議会議員選挙を同日に行って欲しいという願いは理解できます。しかし、品川区議会として願意に添うか否かの結論を出す以前に、検討すべきことがあると考えます。

検討すべき大きな点の一つとして、どんな場合も同日にすべきか?ということがあります。現在の区長選と区議会議員選挙が同日になっていない理由は前区長の急逝によるものですが、選挙日が合わなくなる要因はほかにも考えられます。区民にはリコールの権利が認められており、一方区長には自ら職を辞する権利も認められています。あってはならないことですが、他自治体の例を見るまでもなく、不祥事による辞任もあり得ます。たった一人である区長に不測の事態があれば必ず区長選は行われるので、区長選と区議会議員の選挙の実施日が合わなくなる可能性は常に存在しています。

そのずれの修正について、現時点でルールを定めたものが公職選挙法第34条の2にある90日特例です。本請願の願意はそのルールの90日を超えた場合も合わせるべきという趣旨に理解できます。しかしながら先に述べたとおり選挙日が同日でなくなる要因は常に存在しており、議会としてどれくらいの期間の隔たりなら容認するのか、それとも一切容認せず必ず同日選挙をしていくのかの議論は2015年から2017年に実施された議会改革の検討の中でも行われていません。

議会として行うべき必要な議論も十分に行わないまま臨時議会を招集してまで採択とするのは拙速のそしりをまぬがれません。よって、現時点では不採択が妥当であると主張し、生活者ネットワークの反対討論とします。

決議文への反対討論

品川・生活者ネットワークを代表して、議員提出第1号議案「品川区長選挙および品川区議会議員の一般選挙に関する決議に反対の立場で討論します。

本決議文は、現在同日開催となっていない品川区長選挙と区議会議員選挙について同日実施を課題とし、選挙のあり方について長期的な視野からの十分な議論を推進する、という内容です。その趣旨は十分理解できます。が、問題は審議の手順にあると考えます。

先ほどの請願第14号への反対討論でも述べましたが、選挙の同日実施は課題と考えます。しかし、現時点で「臨時議会の中で緊急を要するもの」として決議する内容とは思えません。決議文を出すか否かも含めての議論が丁寧になされるべきです。

従って本議会での決議には反対を主張し、品川・生活者ネットワークの討論とします。

(よしだ・ゆみこ)