品川区の地域包括ケアの現状は?~一般質問から見えたこと~
超少子高齢社会を迎え、これまで公的なサービスで支えてきた福祉を地域全体で担おうという方向に向かっている。さらには高齢者も障がい者も子ども若者も助けを必要とする人たちを地域で包括してケアをする、「地域包括ケア」という考え方が打ち出されている。生活者ネットワークは「地域包括ケア」という方向性には賛同する。問題はその仕組みをどのように作り上げていくかにある。
今回の一般質問では、介護保険事業をふくむ高齢者、障がい児・者、地域福祉のそれぞれに関する品川区の諸計画の中から、地域の支援のしくみづくりを取り上げた。
ポイントは相談から支援につながるしくみづくり
諸計画では、地域包括ケアの第一歩は相談から支援につながる仕組みとしている。その実現には誰もが気軽に相談できる窓口が近くにあること、相談窓口が的確にサービスにつなげてくれること、そして相談者の身近にサービスがあること、この3つが必要だ。相談窓口としては、13の地域センターに「支え愛・ほっとステーション」が設置され、生活支援コーディネーターが2人ずつ配置されている。
「身近な相談窓口」として活用が進んでいると言いうが、「的確なサービス」につながるか否かはコーディネーターの力量に負うところが大きく、また力量があっても地域に必要なサービスが無ければつなげようがない。サービスの構築は高齢者福祉課と生活支援コーディネーターの役割とされているが、今のところボランティアである地域支援員の確保と気軽に立ち寄れるフリースペースの増設や運営支援にとどまっており、多様な相談に応えるだけのサービス構築への道のりは遠い。
さらに厳しい障がい児・者の「相談から支援につながる仕組み」
品川区は地域包括ケアセンターの基幹センターを区の高齢者福祉課とし、13の在宅介護支援センターをそのブランチとしていることからも分かるように高齢者施策が起点となっている。障がい児・者は全く別の制度で相談が行われており、生活者ネットワークがこれまで何度も指摘してきた通り、地域の相談窓口は大変少なく相談支援員も増えていない。相談窓口がその機能を果たせずに結局多くの障がい児・者が区の障害者福祉課に相談に行かざるを得ない。結果として障害者福祉課の相談支援担当は多忙を極め、充分な相談は受けられないというお声が生活者ネットワークに届く。
では、今の地域包括ケアセンターと統合すれば相談窓口が増えるかといえばそう簡単ではない。的確なサービスにつなげるためには高齢者支援の専門性とは全く別の専門性も求められるからだ。
ヤングケアラーへのまなざしは無いのか?
第7期介護保険事業には介護者支援の必要性が謳われている。品川区の計画にも介護者支援についての記載はあるが、具体性はなく、生活者ネットワークが課題としているヤングケアラーには全く触れられていない。ヤングケアラーといわれる子ども・若者はそもそもどこに助けを求めるかの術もわからない場合があり、顕在化には教育委員会と区との連携が欠かせない。答弁に立った福祉部長からは、第8期の介護保険事業計画策定のためのアンケート調査を今年度行う予定であり、その中にヤングケアラーについて調査することを検討、という言質を引き出した。しかし、教育委員会の協力で実施した藤沢市のヤングケアラー調査では、高齢者介護を担っているのは高校生以上が多く、小・中学生は障害のある兄弟のケアや精神疾患のある親の見守りのため学校に行かれない事例が多かったとのこと。その実態の把握にはやはり教育委員会との連携が必須だ。
真の「地域包括ケアシステム」の実現には、これまでの制度や概念にとらわれず、高齢者、障がい児・者、子ども・若者に関わる全ての所管が当事者性を持ち、一から練り直していく必要がある。(よしだ・ゆみこ)