東電福島第一原発事故をなかったことにはできない

代々木公園、さよなら原発1000万人アクションが主催する「さよなら原発・さよなら戦争全国集会」その後行われたパレード! 中央が吉田ゆみこ。左隣は田中さやか。(2015年9月23日)                                  2023年3月3日大江健三郎さんが逝去された。大江さんは脱原発・反戦を訴え続けた方だ。『さよなら原発1000万人アクション』の呼びかけ人としても、落合恵子さん、澤地久枝さん、坂本龍一さん、鎌田慧さん、武藤類子さんらとともに名を連ねた。心よりご冥福をお祈りする。

3月11日、東日本大震災から12年を迎えた。災害関連死を含めると死者・行方不明者は2万2212人となり、今なお2000人を超える行方不明の方々がおられることに心が痛む。そして現在も3万人余の方々が避難生活を余儀なくされておられる事実を、忘れてはならない。報道では復興されつつあるまちの様子が取り上げられるが、避難生活が長引くにつれ、避難先での生活基盤が出来上がり、戻ることをあきらめた方も多いと聞く。災害復興の難しさを考えさせられる。さらには、原発事故によって未だ復興にも着手できない地域があることにも思いを致すべきである。その地域で暮らしておられた方たちは故郷を奪われたに等しく、あらためて原発推進政策の罪深さを思う。そして、その事故を起こした原発によって生み出された電力を使っていたのは私たち東京都民であることも改めて記憶に刻むべきである。

品川・生活者ネットワークは、東京電力福島第1原発事故が起きた2011年暮れから新年にかけて、福島原発の電力供給を受けてきた都民の責任として、東京電力福島原発の株主である東京都に対して行われた『原子力発電の是非を問う原発都民投票の直接請求』運動に参加し、多くの市民と共に署名集めに取り組んだ。この運動は、地方自治法74条に則った「条例の制定を求める直接請求」で、2か月間の署名期間で自治体(この場合は東京都)の有権者数の1/50の署名を集めることが必要だった。署名は都内基礎自治体ごとに集める必要があり、品川区では連日大井町ヤマダ電機前で、受任者となった方たちが品川区民に呼びかけ、9000筆を超える署名を集めた。各地で同様の運動が行われた結果、東京全体では都民有権者数の1/50を大きく超える32万3076人の署名が集まった。

請求代表者は都内自治体どこでも署名を集めることができるので、渋谷、立川、新宿とどこにでも出向いて署名を集めた(右から3人目が吉田ゆみこ)。

原発都民投票条例制定を求める直接請求署名簿は2012年5月10日に東京都に提出され、当時の石原都知事は反対の意見を付して議会に上程。結果は、都議会本会議で、賛成41人(民主30 共産8 生活者ネット・みらい3)反対82人(自民37 公明23 無所属3 民主19)で原発都民投票条例は否決されるという残念なものだったが、多くの市民が運動の趣旨に賛同し、署名集めに参加したことは都内での市民運動の実績のひとつとして評価をしている。当時、私吉田ゆみこは、議員ではなく一市民として直接請求代表者の一人に名を連ね、都議会の都市整備委員会で意見陳述を行った。都議会議員と多くの傍聴者の前で、直接請求の署名運動に参加した多くの市民を代表する一人として意見を述べる緊張感は今でもはっきり記憶をしている。

直接請求署名簿を都庁に届けた。請求代表者の一人として当然同席。集まった市民の後ろには数百の署名簿の箱がある。32万人余の思いを、国政与党議員と一部の野党議員は否定した。(前列右端はジャーナリストの今井一さん[国民投票/住民投票]情報室 事務局長、5人目が吉田ゆみこ)

私は当時、生活クラブ生協・東京の理事長を務めており、生活クラブの長期計画実行の一環として、自然エネルギーへの転換を実践するべく、生活クラブ風車「夢風」の建設ににかかわっていた。東日本大震災とそれに続く原発事故は、皮肉にも「夢風」建設事業を生活クラブ生協の総代会に提案をするための準備を進めている最中に起こったのだ。「もっと早く自然エネルギーへの転換事業を提案をすべきだった」深い後悔の念に苛まれたことも記憶している。

それだけに、東京オリンピック招致の際に、故安部元総理が「福島原発はアンダーコントロール」と発信した姿は、思い出す度に今でも怒りを禁じ得ない。アンダーコントロールどころか、現在でも、福島原発事故処理は1号機の廃炉作業は計画通りには進まず、延期延期の状態。さらに、汚染水は希釈するから問題なしと突如海洋放出を閣議決定。東北の関係漁業組合がこれに対して反対声明を出したのは当然である。さらには汚染された土を新宿御苑に持ってくるというような報道もある。先に述べたように福島原発の周辺は未だ帰還困難区域であり、故郷に帰りたくとも帰れない人もおられるのが現状だ。東京オリンピックが終わった現在もアンダーコントロールならぬ「アウトオブコントロール」の状態だ。

ところが岸田政権は、前2回の国政選挙(衆院・参院選)をはじめ、国会にも国民にも何ら事前説明もせずに、原発の新増設、最長60年としてきた原発の運転期間60年の延長、電力の安定供給と脱炭素社会の実現に向け原発活用、次世代原発の開発などを打ち出し閣議決定。多くの国民の脱原発の考えとかけ離れており、原発事故を起こした国のトップであり、且つその事故処理も未だできない国のトップとしての自覚に欠けていると言わざるを得ない。

品川・生活者ネットワークと、私、吉田ゆみこは、原発ゼロ!原発再稼働ノー!省エネ・再エネ100%のまちをめざして、今後も発信、活動していきます。

(よしだ・ゆみこ)