DV被害者支援強化と二次被害の根絶を!

学習会を終えて、これからDV防止の動きを広げていく決意を皆で共有。前列左から3人目が吉田ゆみこ

 

昭島ネットと国分寺ネットが共催DVで実施した都政フォーラム「DV被害者、子ども連れ去りへの継続した支援から見える自治体・国の課題」に参加した。

この日取り上げられたDV(ドメスティックバイオレンス)は、夫から妻への暴力のケースだった。学習会は実際に元夫によるDVを受け、夫から逃げた後、今度は様々な機関の対応の拙さからその元夫に子どもを連れ去られた被害者でもある方(以下:Aさん)の体験を基にして進められた。DV被害者への自治体や都・国の支援策や支援の体制の問題点をあぶり出し、どこがどのように拙かったのか、本来はどうあるべきだったのか、が具体的に語られていった。

なにしろ、当事者の体験が元になっている(しかもその被害は未だ継続している)ので、事態の深刻さが直接に伝わってくる。対応の問題は本当にさまざまな場面で起きている。例えば心労のあまり体調を崩して入院した病院(治療費についての問い合わせが夫に行ってしまい、入院先を突き止められてしまった)。例えば母親が入院している間に子どもを預けた養護施設(施設が「父親だから…」という理由で会わせてしまい連れ去り未遂)などなど。数え上げればきりがないほどだが、共通しているのはDVそのものへの認識の甘さ、そしてDV加害者を相手にして被害者を守るということについての認識の甘さと緊張感の欠落。

本来自分たち被害者を守ってくれると信じて相談した先の対応によって、さらなる被害を受けてしまった時の絶望感は想像するにあまりある。どの「二次加害」も深刻で見過ごしにはできないが、ここで特に取り上げたいのは自治体の誤った対応による二次被害だ。 

この事例は都内某市で起きている。Aさんは市に対してDV被害者としての支援措置を申請している。そして、連れ去られた次女の本人確認は住基カードのみと厳格に設定。また、この市は支援措置の本人確認についての厳格な審査を、ほかの証明書事務にも拡大適用することを定めているということだ。つまり、DV被害者への支援策として、加害者が勝手に子どもの住民票や戸籍類を動かせないように対策していたということだ。それにもかかわらず、次女の戸籍が親権者である母親の知らない内に移されてしまうという事態が起きてしまった。

元夫(DV加害者)に伴われて次女が窓口に来庁した際、DV警告表示から支援対象者と認識していながら、パスポートで本人確認して戸籍謄本類を交付してしまっている。この事例の当事者を支援している弁護士の言葉によれば、次女が加害者と窓口に来た段階で、窓口全体に緊張感が走り、被害当事者への連絡を急ぎ、課全体としての対応を協議する流れになるべきだったということだ。

ほかにもミスが重なっているのだが、それを言い立てるのが目的ではない。一つ事例があるということは他でも起こりうるということを言いたいのだ。これは品川でも起きうる問題だと捉えなくてはいけないということだ。 

学習会では、この事例の被害者の支援を10年以上続けている方から「この場には基礎自治体の議員もたくさん来ているようなので、今日の学習会を単発に終わらせず、ぜひDV防止への動きを広げていってほしい」と繰り返し呼びかけがあった。

品川区では20153月から2018年の「品川区配偶者暴力対策基本計画」が策定されている。しかし、この事例でもわかるように計画だけでは役に立たないということだ。実際はどのように対策されているのか、この事例のような具体的なケースを念頭に置きつつまずは実態調査から始めたい。(よしだ・ゆみこ)