羽田増便・飛行ルート変更計画は白紙撤回を!!

羽田増便計画にかかる市民らによる緊急集会「羽田空港問題シンポジウム」。10月31日

基調講演で、羽田計画、日本の航空政策に警鐘を鳴らす秀島一生さん

 今、羽田空港の増便が計画されている。滑走路の使い方や航路を見直すことでそれが可能というのだが、この増便は様々な問題をはらんでいる。

1031日、当該自治体の市民らによる考える会が主催した「羽田空港問題シンポジウム」に参加し、元日本航空国際線チーフパーサーで現在は航空評論家の秀島一生さんのお話を伺った。

「航路の見直しによる増便」がどのようなものかというと、たとえば、現在南風の時に羽田に到着する飛行機は東京湾上空を通って羽田空港に着陸する。それを一旦都心の上空へ進入し、埼玉県上空で方向を変えて練馬区・中野区・渋谷区・目黒区・港区・品川区・大田区各区の上空を通って羽田に入るようになる。つまり着陸直前の高度を下げるところで23区の市街地上空を飛ぶのだ。航路は2本予定されており、両方を合わせると1時間当たり44便の飛行機が飛ぶ計算になる。品川区を通過する高さは大井町駅近辺で約300m、音は約80dBで地下鉄の車内と同等の騒音だ。時間帯は15時から19時に限るというが、その間騒音にさらされるわけで市街地の上を飛ぶ前提とされる南風時というのは、特に騒音が高まるともいわれる。さらに、騒音に限らず、氷解をふくむ落下物の問題、大気汚染の問題など住宅密集地の上を低空で旅客機が飛ぶことによる懸念は尽きない。

専門家も警鐘を鳴らす危険極まりない増便計画

秀島さんは30年に及ぶ経験から、新航路について様々な危惧を指摘された。たとえば、世界でも類を見ない広範囲な人口密集地を低空で飛ぶこと。万が一の事故の時も逃げ場がない。また、成田では毎年報告がある落下物も問題だ。落下物は着陸前に車輪を出す時に多く発生し、新航路では住宅地の上で車輪を出さざるを得ない。現在は落下物を避けるために、本来は木更津あたりが車輪を下すタイミングのところを、国交省の「勧告」に従って海上に出てから下しているとのこと。つまり、国交省も危険性は十二分に承知しているのだ。

シンポジウムでは、秀島さんのお話のあといくつかの地域でこの問題について活動をしている人たちが登壇し、それぞれの地域での活動状況などが報告された。品川区からは、私が報告をした。品川区ではこの状況に対し区内5つの地域の区民の皆さんから本年第2回定例議会に「品川区上空への新飛行ルート設定に反対する」旨の請願が提出され、行財政改革特別委員会に審議が付託された。生活者ネットワークは危険極まりない飛行ルートには、絶対反対と紹介議員に署名したが、継続審議の状態だ。

住民の生活より経済の発展が優先?!

「日本の発展のため」にビジネス環境を整えて首都圏の国際競争力を強化し、観光客を呼び込んで経済を活性化する、そのためには国際線の増便が必要、というのが国土交通省の説明だ。国土交通省が開催したオープンハウス形式の説明会に行ったが、渡されたパンフレットは「増便ありき」で説明が始まっており、航路の下の私たちの暮らしや増便後の羽田空港の安全管理には何ひとつ言及がない。実際、国交省職員による説明でも増便の必要性ばかりが強調されるという、お粗末なものだった。

安全無視! 危険極まる「羽田増便計画」は白紙に!

秀島さんば、そもそも首都圏の空港機能を羽田に一極集中させることに無理があるという。これは日本の航空政策がしっかりしないまま観光政策とマッチさせているだけ、という根本の問題があり、羽田増便に限らず、安全は二の次、三の次に押しやられ、経済優先の規制緩和が次々行われているのだと、強く警鐘を鳴らす。羽田増便問題は航空政策全体の問題でもあるようなのだ。

首都圏上空を、世界に類を見ない住宅密集地を、旅客機が飛びまわる?! その下に日々暮らす私たちはたまったものではない! 安全より経済優先、観光政策優先の航空政策を、ここで見直すためにも、「羽田増便・飛行ルート変更計画」は白紙撤回すべきだ。<よしだ・ゆみこ>