羽田増便計画学習会@品川区

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このHPでも何度かご報告をしている羽田増便新ルート計画についての学習会を品川区でも開催にこぎつけた。品川区議会議員の中でこの計画に問題意識を持つ有志議員が、会派の別を超えて参加する学習会となった。私も有志の議員のひとりとして参加し、当日は進行の役割を担った。

講師は、航空評論家の秀島一生さん。今まで他の地域での学習会に参加してお話を伺い、品川で学習会をするならやはりこの方と思ってお願いした。秀島さんのお話はいつもご自身の日航のパーサー歴30年の経験による実感から始まる。在職中の30年で日航は、ニューデリー、モスクワ、羽田沖、御巣鷹・・・・と、5つの大事故を起こしている。「30年で5件」の経験は秀島さんに「飛行機は墜ちる」こと、それを前提に危機管理をすべきという意識、というより航空科学を自覚するに至った。この増便計画の問題点については、これまでにも報告しているのでそちらもご参照いただきたい。(2015.11.12 2016.2.10)

秀島さんは、首都圏の空港機能を強化して経済活性化を促すことに反対しているわけではない。しかし、これほどの規模の首都圏の空港機能を羽田に一極集中させることが問題であること、そもそも2030年に6000万人の外国人観光客を誘致するなどという実現不可能な数と経済効果を掲げ、だから増便だとする発想自体がナンセンスだと指摘される。世界を見渡しても首都圏の空港機能は2つか3つの空港に分散させるのが常識。羽田についても、成田の機能も活かし、そしてできたら、もう一つ例えば茨城空港の活用も行えばよいというのが秀島さんの持論だ。

「航空機事故は起こる」ことを前提に危機管理が必要であり、密集市街地上空を飛行するような一極集中の航空行政は改めるべきと指摘する秀島一生さん

「航空機事故は起こる」ことを前提に危機管理が必要であり、密集市街地上空を飛行するような一極集中の航空行政は改めるべきと指摘する秀島一生さん

羽田空港は4本の滑走路が井桁型に配置されている。つまり、空港内で飛行機同士が交差する可能性があるわけで、滑走路の設定としては極めて異例、危険と隣り合わせの空港だ。空港施設としてきわめて問題であり、かつ、首都東京を含む1都8県の上空を米軍が制空する「横田ラプコン(空域)」があることが、飛行機の運航をさらに危険なものにしている。羽田を離発着する旅客機が侵入することができない見えない空の壁が、航路設定に大きなリスクを与えているからだ。そして、今回の航路変更も横田空域の問題がなければ、人口密集地上空を避けた航路のとり方は可能だという。

ともすれば、新しく設定される航路の下に住む人たちだけの問題とされかねない羽田空港増便新ルート計画だが、突き詰めると、問題は日米地位協定にまで遡るのだということがわかる。この問題は陰に隠し、市民には他に案がないかのような説明を行って、危険を容認せよという姿勢は本当に納得しがたい。

議員有志のひとりとして、アピールをする品川・生活者ネットワーク区議の田中さやかさん

議員有志のひとりとして、アピールをする品川・生活者ネットワーク区議の田中さやか

5月27日、羽田空港で大韓航空機がエンジントラブルを起こし発火、乗員乗客全員が緊急脱出するという事故が起きた。ニュースを聞いた瞬間、秀島さんが再三指摘される航空行政における規制緩和の事例が思い浮かんだ。かつては空港に到着した航空機は、次に出発する前に必ず機体の点検を受けなければいけなかったのに、今はそれが緩和され、復路の機体点検は放逐されているということだ。そもそも、この事故の機体が出発前に点検を受けたか否かはわからない。しかし、実際にトラブルを目にして、安全確保のための点検整備についての規制を緩和すべきではなかった、と改めて確信した。

この度の学習会は、約100名の参加者があった。急な設定にもかかわらず、予想以上の人数で、席が足らず参加してくださった皆さんにご迷惑をかけてしまった。この問題への関心がなかなか広がらない、と苦慮してきたが、少しずつ情報が広がってきたようだ。しかし、一方では「どうせ、もう決まったことなのだから」というあきらめの言葉もたくさん聞く。その姿勢が今の政権の暴走を許すことにつながっているのではないだろうか。

生活者ネットワークは、これからも情報を広げて問題意識を持つ人を増やし、航路案撤回に向けて最後まであきらめずに行動していく。ご意見を、このHPのメールフォームからお寄せください。<よしだ。ゆみこ>