平和を願って戦争を語り継ぐ2題

平和のための戦争展

大井町区民ギャラリーで開かれた「しながわ平和のための戦争展」入口にて。

8月10日から13日にかけて品川区民ギャラリーで行われた「平和のための戦争展」を観覧した。今年で34回を数えるという、その継続の努力にまずは敬意を表したい。展示内容は毎年工夫を重ねてこられているとのことだが、今年は「加害の歴史」に目を向ける展示をしたとのことだった。世界地図が掲示され、日本軍が戦線を広げていく様子が矢印や点線で示されていた。資料の提供があって、南京大虐殺の後の屍が重なっている写真や、抵抗できなくした男性を銃剣で刺している写真が展示されていて衝撃を受けた。

従軍慰安婦と呼ばれる女性がいる部屋の前に行列をつくる日本兵の写真もあり、10年以上前に韓国で「ナヌムの家」(元従軍慰安婦が集まって暮らす家)を訪れた時の痛みを思い出した。展示された資料を見て、感想を求められても言葉が出ずにいる私に、元従軍慰安婦の一人が日本語で声を掛けてくれた。「大丈夫、わかっているよ、日本人にも良い日本人と悪い日本人がいるんだよ」彼女の流暢な日本語の背景を思って、余計言うべき言葉が見つからなかった…。

展示は現代の加害の事実として、安保関連法のことや大学への軍事研究費の増額や武器関連企業への助成のことにも触れていた。平和を願い、二度と戦争を起こしてはならないと望んでいる私たちの税金が、戦争のために使われてしまっている事実から目をそらしてはならない。この展示で表現されているのは税金の使いみちだったが、実は私たちの預金や貯金も同じような使われ方をしている可能性がある。今現在も、意図しない形で私たち自身が世界の紛争や戦争の加害者になっている可能性は私たちすべて場自覚すべきだろう。

品川区の戦争遺跡を地図で示している展示物。これらの遺跡を守り語り継ぐことも私たちの世代の使命だ。

展示はその他「学童疎開」「小島義一さんが描く城南大空襲」「品川の戦争遺跡」「戦争中に使われた品々」など充実した内容だった。

DVD「いま聞いておきたい!あの日の記憶」上映会

品川区は終戦70周年を機にケーブルテレビで「いま聞いておきたい!あの日の記憶」と題して品川区での戦争をまとめた番組を制作した。そのうちの3本をDVD化している。とてもよくできたDVDだと思う。今年の予算特別委員会で田中さやかがこのDVDの積極的活用を求めて質問をしたところ、区内の小中学校に配布をして校長連絡会で活用を求めたほか区内図書館で上映会を行っているという答弁だった。

広報しながわ8月1日号には図書館の平和フェア「戦争は過去のもの?」の案内があり、そこに「品川図書館では映画上映会も行います」とあった。図書館の平和フェアの一環としての上映会ということだ。私自身はすでに図書館から借りて視聴しているのだが、どんなふうに催されるのか関心があり、行ってみた。

結果は大変残念に思った。図書館の入り口などに何も平和フェアとしての上映会を案内する掲示物や看板などが何もなかったのだ。品川図書館は普段も定期的に映画上映会が催されており、単に「8月の上映物がこのDVD」というだけの位置づけのように思えた。「広報しながわ」の案内とは齟齬があると感じた。観客が30名ほどというを多いとみるか少ないとみるかは評価が分かれるかもしれない。しかし、図書館としてもいつもの月よりお客さんが少ないということで直前に館内放送をして視聴を呼びかけたようだったがあまり参加にはつながらなかったらしい。

上映会にはケーブルテレビの取材も入っており、お客さんの一人にインタビューしていた。そばを通りかかった時に聞こえた範囲では「図書館でこのDVDを借りられることを知らなかった。借りられるということなので、町会などにも呼びかけて自分たちで上映会をしたい」というような良い反応だった。内容もよく、参加者の反応も良かったとなれば、余計に上映会の意義などのアピールの弱さが残念でならない。

私自身戦後生まれの「戦争を知らない世代」だ。しかし、体験した人たちから直接話を聞くことができた世代であり、私たちに課せられた使命はその声をいかにきちんと次の世代に語り継ぐかということだ。責任重大であり、難しい使命だと思う。今回参加した「平和のための戦争展」への協力や参加の呼びかけを行うこと、「いま聞いておきたい!あの日の記憶」DVDを積極的に活用すること、それらも使命を果たす手段の一つとして地道に活動していこうと思う。