変わる!国保、上がる!保険料~第一回定例議会報告

第一回定例議会の議会報告を大井町イトーヨカドー前で同僚の田中さやか区議と行う吉田ゆみこ。国保の話を聴いてニュースを見てくださる方は多い。(2018.4.3)

品川区の第一回定例議会では、品川区の国民健康保険条例の改定が審議された。生活者ネットワークとしては容認できないと判断し、反対をした。以下にその理由をご報告する。

変わる!国民保険制度

今年度、国民健康保険制度が大きく変わる。これまで市区町村が財政運営主体であったが、都道府県に主体が移管される。これに伴って品川区国民健康保険条例が改定となる。これまでは品川区が保険者だったものが、都が保険者となる。

改定の理由は高齢化と医療費の高騰により、自治体によっては保険制度の維持が財政の負担になっているということが挙げられています。国民皆保険制度を維持するために保険者を広域化するというのが制度改定の趣旨だ。改定によって保険料の引き下げにつながる自治体もある。しかし一方で大きな問題もはらんでいるのが本制度改定だ。

上がる!保険料

国は、現在区の一般財源から国民健康保険特別会計に繰り入れられている「法定外繰入金」を「解消していく」ことを求めている。また、高額医療費についても保険料で賄うことになる。

改定の大きな意味は「国保財政の安定化」「国民皆保険の維持」であるといわれる。しかし、本改定の方向性は保険料の値上げにつながり、現時点でも中間所得層にとってもかなりの負担となっている保険料が、低所得層にとってはさらに重い負担となることは間違いない。払いきれずに将来的には不本意ながら皆保険のしくみから漏れざるを得ない人々が増加し、結果として皆保険の維持をうたいながら無保険者を生み出すことが強く懸念される。

国民健康保険は皆保険制度のセーフティネットであり、社会保障。

区の一般財源から国保会計に財政繰り入れを行うことについて、社会保険に加入している人たちには二重の負担になる、医療を受ける受益者以外の税金がはいることになる、など「不公平感」を唱える説もあるが、これは違うと思う。 国民健康保険は他の公的医療保険に入れない人などすべての人が加入できる皆保険制度のセーフティネットともいうべき存在だ。今は社会保険に加入している人にとっても、将来の医療の補償のためには国民健康保険の維持は欠かせない問題だ。

国民健康保険法は1958年に全面的に改正された。第一条に掲げられた目的が大きく変わり、それまで相互扶助のしくみとされていたものが、社会保障のしくみであることが明記された。「保険」ではあるが、国民健康保険は社会保障だということを認識しなくてはいけない。

国民健康保険が整備された当初は農林水産業者や自営業者などが加入者の約7割だったが、今や無職の人が4割以上、被用者で3割以上、その多くがパートや派遣などの非正規雇用だ。つまり所得の低い層が国保の加入者だ。加入者の8割弱の世帯が所得200万円以下だ。日本では、低所得層を対象とした医療保障制度は生活保護の医療扶助しかないので、国保は生活保護手前のセーフティネットとして医療を保障する役割も担っている。この現状を踏まえた「皆保険制度構築」を考えなければならない。「保険」だからと言って高い保険料負担を課すだけでは、皆保険のしくみが破たんすることは目に見えている。

本当の皆保険制度構築のために

年々高くなる国保料の主な要因は国が負担を減らしていることにある。1984年の国民健康保険法改正により国庫負担を削減、それ以降事務費の国庫負担廃止など削減が続き、国保の総収入に占める国庫支出金の割合は1980年代には半分あったものが今では1/4以下だ。国庫負担を減らした分を国保加入者と自治体に転嫁されてきたのだ。一般財源からの繰り入れは、国から転嫁された責任を果たすため、保険料の値上げなど区民の負担を減らすために行ってきた自治体としての自助努力である。今更文句を言われる筋合いのものではなく、財政的に可能な自治体は堂々と行うべきである。

本当の意味で国民健康保険を皆保険制度のセーフティネットとするために、改めて社会保障制度と認識し、高い保険料が生み出される構造、保険料を滞納せざるを得ない状況を回避するために、国保に加入する人の実情、国庫負担の減額により加入者と自治体に負担と責任が転嫁されている仕組み、など構造的な問題への着手が必要であり、急務だ。

国民健康保険の制度自体が大きく変えられようとしている今、品川区としても、区民の健康と福祉の向上を保障する立場から、国保に対する国庫負担削減の方向性に強く異議を唱え、問題提起を行うべきだ。<吉田 ゆみこ>