有害化学物質削減は重要な政策課題!~予算特別委員会から①~
2019年度の予算について、3月4日から15日にかけて予算特別委員会「款別審査」が全議員参加で開かれ、予算項目別の質疑を行うが行われた。その中で取り上げたいくつかのテーマについてご報告をする。
今日のご報告は、衛生費と教育費の質疑の中で取り上げた化学物質の問題について。
実は、昨年の決算特別委員会の衛生費での質疑で「海洋プラスチックごみ」について取り上げた。区が昨年度改訂した環境に関する3つの計画の中で示される状況分析の中に「海洋プラスチック」への認識が薄いのではないか?区の環境計画を策定するうえでは、もう少しアンテナを高く張って状況分析をすべきだったのではないか?という趣旨の質問だ。それに対して区は「 特に、その当時の区民の関心の高いところを、まずは第一に」という答弁。区民の関心が高いものについて、具体的な取り組みを示していくことは確かに大事だが、それではあくまで区民の関心事の後追いを政策化していくにすぎず、区の計画の役割はそれでよいのか?と大変疑問に思った。
そこで今回は、衛生費の項目で今後の品川区の環境政策の中で大きな取り組みとして計画されている(仮称)しながわ環境みらい館を題材にして、ここから区民に発信する環境啓発のテーマをどのように選ぶのか?という趣旨の質問を行った。そして、教育費では給食当番の白衣の洗濯に使われる柔軟剤の香りの害(香害)を題材に、香料に含まれる化学物質に敏感な子どもたちへの配慮を求めた質問をした。
質問の意図は具体的な答弁を期待するというより、「環境問題は、区民の関心が高いものだけに取り組むだけでは不十分である。そして有害化学物質の削減をテーマの一つとして取り上げて欲しい」という主張をすることにあった。
今、区議会の中では「SDGs」と「受動喫煙」について各会派から発言があり何度も取り上げられている。両方とも重要な政策課題である事に異論はない。気になるのは両方とも今すでに人々の関心が高まっている問題だということ。人々の現在の関心からこぼれている大きな課題にもアンテナを張るべきではないか?ということを言いたいのだ。
SDGsに関して言えば「SDGsの17の目標」に化学物質を正面から取り上げたものがない。SDGsには、17の目標を達成するための具体的な169のターゲットとターゲットのさらなる詳細版である230の指標があり、そちらを見れば化学物質問題も含まれている。しかし、一般的には17の目標に人々の関心が集まることは間違いない。
化学物質に関しては同じく国際的合意である「SAICM」(2002年のヨハネスブルグサミットで定められた実施計画の内容を実行する「国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ」)がある。2020年までに化学物質のリスクを最小化することを目指しているが、ほとんど人々の関心の対象になっていない。同じ国連が取り組むものでも、これだけ差があるのが現状だ。自治体の政策課題を定めるのに「区民の関心の高さ」だけで判断すると重要な課題が抜け落ちてしまう可能性がある。
品川区環境基本計画はメインテーマの扱いではないが「化学物質による汚染の防止」も計画の対象範囲としている。NPO有害化学物質削減ネットワークが行ったアンケートによれば一般的な家庭でも7割が有害化学物質を保持しているということだ。
衛生費では(仮称)しながわ環境みらい館ではぜひ、有害化学物質削減をテーマとして取り上げて欲しいということを主張し、教育費では香りの害など化学物質の被害者はそのものによる直接の被害だけでなく周囲の無理解によって二重に悩まされていることを訴え配慮を求めた。
予算特別委員会を締めくくる「生活者ネットワークの本予算案に対する意見表明」の中にも「煙草のように社会の関心を集めたものに限らず、化学物質については予防原則の立場に立った施策を求める」ことを盛り込んだ。
有害化学物質の削減は、生活者ネットワークが、そして私吉田ゆみこ自身が長く取り組んでいる大きなテーマだ。これからも真正面から取り組んでいきたい。(よしだ・ゆみこ)