市民参加のまちづくりを!
今年最初のご報告は、ネットが主張する「市民参加のまちづくり」がテーマだ。
昨年後半は、「広町再開発」それに関連する「区庁舎建て替え」そしてそれらに巻き込まれるように発生した「ひろまち保育園閉園」が大きな問題として浮上した。問題点は様々あるが、根っこにあるのは政策決定過程の不明瞭さだ。不明瞭なだけではなく、その過程に一切市民参加がないことだ。途中の説明もなく、説明されるのはすべて決まった後だ。
「市民参加のまちづくり」とは、すなわち品川区の政策決定へ品川区民が関与する仕組みがあるべきというもの。品川ネットとして品川区の現状を何とか変えていくべく、今年も取り組んでいきたい。
品川区がそんな現状だが、昨年の11月17日、鳥取県米子市で住民協議会の開催に向けた学習と話し合いの場がもたれるというお知らせがあり、田中さやかと吉田ゆみこ、そして生活者ネットワークのメンバー数名で参加した。
住民協議会とは、自治体の政策の中からテーマを一つ絞り、無作為に選んだ人の中から有志が一堂に会して数回にわたる議論を交わし、具体的な提案まで持っていくもの。一度住民協議会に参加した人は、自治体の政治を「自分ごと」として考えるようになるという。
全国の自治体では、自治体政策への住民参画の仕組みとして取り入れるところが増えてきており、生活者ネットワークとしてはこれぞ「市民参加」の仕組みだと、とても関心を持っている。ただ、先行実施事例の多くは首長発で実施されていて、つまり首長がそういう方針を持たないと実現は難しいと考えていた。ところが米子市では全国で初めて「住民発」でそれを実施し、成功させたという。
以前、構想日本のフォーラムでこの事例報告は聴いたのだが、とても参加者が多く具体的な質問はすることができなかった。一度当事者の方たちからお話を伺いたいと思っていたが、今回米子市の事例に倣って徳島で住民協議会を開きたいという方たちが、米子市を訪れて勉強会を持たれるとのこと。今回はその勉強会に参加させていただくことができた。
米子市では「原発」をテーマに取り上げたのだが、参加者だけでなく傍聴者の、賛成派の人からも反対派の人からも「相手方の意見が訊けて良かった」という感想がでたという。一般的には賛成の人は賛成派の集会、反対の人は反対派の集会に参加して意見を言うのが現状だ。集会参加の満足感はあっても議論全体の深まりは難しいのではないか。賛成も反対も、賛否を決めかねている人も一同に会してコーディネーターの交通整理を受けながら冷静に意見を言い合ってこそ、「議論」と言えるのではないか。
徳島で計画されている住民協議会のテーマは「ごみの焼却場建設」だ。今は「建設決定に至るプロセスが不明瞭なので反対」という人たちと「産業廃棄物焼却につながる建設でありとにかく反対」というグループが運動をしている。自分たちの「ごみの焼却」という暮らしに身近な問題でありながら、建設予定地はあまり人が住んでいない場所ということもあって多くの人にとっては「自分ごと」になっていないという。建設可否の結論もさることながら、とにかくもっと多くの住民がこの問題を自分ごととして考えるべき、というのが徳島で住民協議会を開催する意図のようだ。
徳島の皆さんの勉強会でありながら、米子市での手法や成功させるためのポイントなど色々伺うことが出来た。徳島の住民協議会の成功を祈り、その活動に注視しつつ「品川でやるとしたら」とテーマを探っている。(よしだ・ゆみこ)