生活困窮者自立支援法施行 品川区の相談窓口「暮らし・しごと応援センター」がオープン

 

尾藤先生のお話は、生活保護へのバッシングがいかに不当なものであるかがよく理解できる内容だった。(2015.5.13アドボカシーカフェにて)

生活困窮者自立支援法施行後間もない513日、ソーシャルジャスティス基金が主催するアドボカシーカフェに参加した。

テーマは「生活保護‐バッシングに抗して-活用術を考える」。ゲストは尾藤廣喜さん(弁護士 生活保護問題対策全国会議代表幹事)、コメンテーターは寺中誠さん(アムネスティ・インターナショナル日本前事務局長)だった。

私は、生活保護に対するバッシングは理不尽だという立場に立つものの、ではバッシングのひとつひとつに論理をたて明確に反論できるかというといささか不安であり、とても期待して参加した。結論から言うと、政策論を獲得するとともに、頭が整理されて自分の視点がきっぱり定まった思い!

尾藤さんは、日本の貧困の現状からお話を起こして、生活保護制度の変遷、今の生活保護制度の原理、そしてそれがどのように骨抜きにされてきたかを順々に説かれた。そして、寺中さんは「人権」という視点から生活保護の制度について話してくださった。

詳しい内容については、そのうちソーシャルジャスティス基金のHPに報告が出ると思うのでそちらを見ていただきたいのだが、尾藤さんのお話から、私も生活保護の制度についてすべてを了解してはいなかったこと、日本の貧困の現状が世界の中でも深刻な状況にあることを改めて認識することとなった。そして、生活保護へのバッシングは、実は周到に用意された不平等の温存、弱者切り捨て策そのものであり、メディアはそれに乗ったのだという現実に背筋が寒くなる思いだった。

また、寺中さんのお話では、生活保護という制度に福祉的視点からアプローチをする考え方と、人権という視点からアプローチをする考え方の違いを伺い、本当に自分の考えが整理されたように感じた。「人権という視点で考える場合、意図的に不平等な状況をつくり出すことによって実質的な平等をめざす。福祉的にアプローチすると、形式的平等を重視することになりがち。形式的平等は実質的な不平等を生み出す」具体的な分かりやすい例を引きながらのお話で、この考え方は、これまでも生活者ネットワークが取り組んできた「障害者の権利」の問題、「子どもの権利」「女性の権利」すべてに共通する考え方であり、要するに、では私たち生活者自身の暮らしのセーフティネットをどうするか、解決策を見出すための根源的な考え方だということが理解できた。

そして、分かりやすくするために「人権」と「福祉」を対比してお話しくださったが、本来は「福祉分野」とされるものについても「人権」という視点がもっと重視されるべきということだろうと思いながら聞いた。

 

この4月から生活困窮者自立支援法が施行され、それぞれの自治体が相談窓口を設置することになった。511日付の「広報しながわ」には、品川区の相談窓口として「暮らし・しごと応援センター」がオープンしたことが掲載された。相談窓口があることを当の生活困窮者や要支援家庭にどうやって周知していこうとしているのか、相談に行きやすい窓口になっているか、活用の状況はどうか、そしてそもそも対象者を「生活保護受給者以外」としているが、生活保護との関係はどうなっているのか、など確認しなければならないことがたくさんある。「人権尊重」「権利擁護」というフィルターで点検し、本当に生活困窮者のセーフティネットとして機能する窓口にしていきたいと思う。<よしだ・ゆみこ>