品川区災害復旧基金条例と品川区災害復旧特別会計条例は必要!? 第四回定例議会報告②
今回のご報告は、品川区災害復旧基金条例と品川区災害復旧特別会計条例についてだ。私が所属する総務委員会で審査された。2つは関連する内容なので一括の審査となった。また、基金には補正予算として15億円が積まれることも提案されていたので、補正予算の審議も絡んでの議論となった。
この条例を設置する趣旨は「災害発生直後に迅速な災害救助・復旧体制を確立し、区民の生命や財産を守るための財政的な備えを確保するため」ということだ。
品川区災害復旧基金は、災害時における救助、災害の復旧・復興の財源に充てるために創設するというもの。そして、災害が起きた時その基金に積まれたお金を一般会計と明確に分けて使い、経理状況を明確にするために特別会計として「品川区災害復旧特別会計」を設置する。さらに、基金が承認された後には、その基金の原資として繰越金の中から15億円を積み立てるとしている。
熊本、鳥取と大きな地震が続き、復旧・復興には様々な課題が指摘されており、これらの条例は一見すると、大変時宜にかなった提案のように思える。しかし、考えるべきポイントがいくつかあり、審議の前に生活者ネットワークとしての議論をした。大きく言うと以下の4点が、議論の焦点となった。
- 大規模な災害からの復興の充てる財源は国と東京都からの補助金とされており、現に東日本大震災後も「品川区として独自の基金を持つべきではないか」という色々な会派の意見に対して品川区は消極的な答弁を行ってきている。それがどうして今、急に変わったのか?
- この基金がカバーする災害とはどういうものを指すのか?ある程度明確にしておくべきではないか。
- この基金に2015年度から2016年度の繰り越し金から15億円を積み立てるというが、繰り越し金のあり方については生活者ネットワークは異議を申し立ててきた。その繰越金を充てる基金を認めて良いものか?
- 特別会計は基金からの繰入金を原資とし、毎年第一回定例議会に予算として計上する。それを議会で承認すれば、災害が起きた時には一々議会の承認を必要とせず、行政の判断で使うことができるという。行政が恣意的に使う危険性はないのか?
議論の結果、それぞれ以下のようになった。
- 確かに大きな災害からの復興までの資金を基礎自治体レベルで賄うのは無理。しかし、阪神大震災以降、立て続けとも言えるような大災害からの復旧・復興状況を見ると必ずしも国や県の支援が素早く行き届くとは言えないようだ。そう考えると、区が独自の財源を持つことは必要ではないか。
- しかし、何に充てるかはある程度決めておくべきではないか。特に品川区のような都会での被災のどこを最優先すべきなのかはある程度合意をとっておく必要がある。
- この点については、なかなか結論が出せなかった。2014年度の最終補正予算で、新しく創設の文化スポーツ振興基金に一気に30億円が積まれることが提案された時、生活者ネットワークは反対をした。その件と同様に、基金の創設の考え方、それに関連して繰越金の扱い、年度予算建てや執行の精度、などなど様々な問題が絡んでいるのだ。しかし、最終的にはこの基金の目的自体は必要と認められるものであり、すでに繰り越されることが決定したお金の使い方としては妥当なものであり、目的に照らし合わせれば15億円は多すぎることはないのではないか、ということになった。
- ただし、行政による恣意的なお金の使い方への歯止めは確認しておく必要がある。
これらの結論を持って、総務委員会に臨み他の委員の意見も聞きながら審議を行った。そして、最終的には基金の創設、特別会計の設置、そして基金に15億円を積むことすべてに賛成した。総務委員会では賛成多数で可決となった。
基金がどこまでカバーするかは、明確な答弁は得られなかったが大枠な想定としては、都市直下型震災、もしくは災害救助法が適用される範囲をイメージしているという。しかし、いざとなればそれが具体的に何を指すかは意見が分かれることだろう。4.の議論については間もなく始まる予算特別委員会での審議にあたり、特別会計にどういう形で計上されてくるか?そこでまたしっかりと議論をしていく必要がある。
また、今回の総務委員会ではこの特別会計の決算はどのようにあるべきか?災害が起きなければ使わないことが前提のお金を区がどの規模まで持つべきか?など今後議論すべき点も提起された。これらについても生活者ネットワークとして、多くの区民の皆さんと議論しながら見解をまとめていきたい。生活者ネットワークへご意見をお待ちしている。
この問題に限らず、区民の皆さまの生活者ネットワークへのご意見をお待ちしております。