性の多様性への理解は進んでいるか?~第二回定例議会報告②
品川区が企画した「性の多様性への理解を促進するための講座」に参加した。7月10日、17日が講師による座学、28日は映画「彼らが本気で編むときは」の上映会だった。
これまでも、LGBT自治体議連に参加して研修会で様々な知見に触れてきたが、今回の講座は基礎的な情報整理から丁寧に行われ、特に性の志向については本当に様々な形があることを改めて認識した。性の多様性について理解をしてきた(若しくは理解をしようとしてきた)つもりでいたが、まだまだ理解が足りずもしかすると私自身の言動が誰かを傷つけてきたかもしれないと深く反省させられた。
この講座参加の前になるが、第二回定例議会一般質問でこの問題を取り上げ品川区の男女共同参画政策における多様な性のあり方への理解促進と支援策について質した。
国レベルでは、例えば法務省が掲げる人権啓発活動重点目標の啓発活動強調事項の中に、「性的指向を理由とする偏見や差別をなくそう」「性自認を理由とする偏見や差別をなくそう」という目標が明記されている。そして2010年12月に閣議決定された第3次男女共同参画基本計画の施策の基本的方向と具体的施策の中に、「性的指向を理由として困難な状況に置かれている場合や性同一性障害などを有する人々については、人権尊重の観点からの配慮が必要である」と明記された。その後、公営住宅法が改定になり、同居親族要件が外されて、法的には同性カップルの入居が可能になった。
また、国民保険証の性別記載について厚労省は2012年、保険証の性別表記に関する事務連絡で、記載で嫌な思いをする人がいない表記を心がけるよう保険者に伝えている。
自治体レベルでも性の多様性の配慮を施策に盛り込む事例が2015年から2016年にかけて急増し、遅々とした歩みながらも、性の多様性への理解が進んでいる。
では、品川区はどうなのか?これまで学校教育における理解促進について決算特別委員会や予算特別委員会での質問に取り上げてきたが、今回は区全体の施策について取り上げた。質問に先立って、庁内幾つかの部署に問い合わせをした。例えば、職員のハラスメント対策として、ことしの4月から性自認・性指向に関するものもハラスメントとすることが定められたとか、職員研修の講師に、通称同性パートナーシップ条例を先進的に制定した渋谷区から当事者である職員を招いたなどの施策が確認できた。冒頭に紹介した講座もこの聞き取りの中で確認した。「性の多様性への理解」は進めようとしていることは理解できたが、課題は多く、その中から3点質問した。
1、国民健康保険の保険証における性別の記載について。品川区は2012年の厚労省事務連絡を受け、当事者から申し出があれば性別を裏面表示にしているという。ところが、このことがHP上には記載されていない。HPへの記載だけが告知のすべてではないが、これが無くてどうやって当事者はこの施策について知ることができるのか?事前の聞き取りの段階では人権問題の相談窓口となる男女共同参画センターでもこの施策を認識していなかった。今後は相談窓口での情報提供の実施されることを要望した。
「HP上の記載は実施する」という答弁があり、7月4日から実施された(こちらをクリック)。それは歓迎なのだが、残念なことにそのページに行きつくのが難しく、施策を知っている人がその情報を目指して行かないと行きつけないのではないか。品川区のHPについては他にも「わかりにくい」というご意見が複数届いている。今後有効な改善策を提案していきたい。
2、区営住宅の入居について。品川区は同性カップルの入居を認めていない。上記したとおり、公営住宅法上は同性カップルの入居が可能になっている。しかし、条例でまだ認めていないのだ。これについては、一般質問後の総務委員会でも補足の質問をした。条例で区営住宅の入居を認めない理由として挙げられたのは「未だ多くの自治体が認めていないこと」「そもそも区営住宅の数が少なく競争も激しいため認めていない」の2点だった。
この理由は納得しがたい。社会的資源としての区営住宅が少なく、且つ必要とする人が多いならそれをいかにして増やすかを考えるべきだ。その社会的資源が少ない、という理由で同じような立場にある人たちを「同性カップルである」ということで排除するのは人権侵害と言わざるを得ない。「他自治体が実施していない」というのも理由にならない。先進的な「人権尊重都市」を誇る品川であるなら、他自治体に先駆けて実施すべきではないか。
3、多様な性を認め合う政策の品川区の計画へ記載について。品川区は今年度第4次男女共同参画のための品川区行動計画の最終年度だ。第5次の中に明記することを求めて見解を質したところ、「計画策定の中で検討を進める。」との答弁を得た。ぜひ実現するよう、注視していきたい。
「性の多様性への理解」は表面的には少しずつ進んでいるが、本当の理解には至っていないというのが質問をしての実感だ。それでも少しずつ進んできているのも確かだ。当事者が勇気を出して声を上げるようになったことが大きいと思う。現実の差別と闘おうという勇気ある行動に寄り添う活動が生活者ネットワークとしての役割だと改めて肝に銘じた。(よしだ・ゆみこ)