食の安全を地域から問い直す~学習会参加報告
あまりメディアでは扱われることはないが、今、日本の食は危機的な状況を迎えている。ほとんど議論されないまま実施された種子法の廃止、表示も義務付けられていないゲノム食品の流通、そして農家がおこなってきた自家採取の権利を侵害する種苗法改定の議論が始まるなどなど…。このままでは私たちの食は多国籍企業に支配されてしまいかねない。この事態に、地域から流れを変えていこうと企画されたのがこの度の学習会だった。
講師は弁護士で民主党政権下の農林水産大臣を務められた山田正彦氏。氏はTPPに一貫して反対している。現在はTPP違憲訴訟の控訴審に取り組んでいるが、現在の日本の食にかかわる様々な問題はバラバラに起きていることではなく、すべてTPPとつながっていると言う。世界の状況も含めたお話に、聴けば聴くほど危機感は募るばかり。
しかし、この状況を地域から変えていくことは可能だというのがこの学習会の本旨だ。TPPの裏には巨大アグリ企業による一連の目論みがあり、そこに対抗するためには、私たち消費者自身が問題に気づき声を挙げて政治を動かす必要があるということだ。すでに種子法に代わる条例を制定した自治体は複数出ている。また、それぞれの自治体で学校給食の食材を有機野菜に変えていくことも有効な手段だともいう。具体的には愛媛県の今治市と千葉県のいすみ市が事例として挙げられた。
学習会後半は、山田氏と参加者の間で「これからどんな行動を起こすべきか」の意見交換が行われた。みんなの議論を聞きながら、農地のない品川区で何ができるかと考えてしまった。そもそも品川区民も行政もあまり農業を身近には感じておらず、TPPについても自分事としては捉えられていない。しかし、学校給食の食材に、特定のところから低農薬野菜等の調達をするという取り組みは行っている。そこを突破口に、有機野菜の取組みの提案は可能かもしれない。まずは、もう少し農業を身近に感じる区民を増やすところから始める必要があるだろうと思う。
最後は「やろうと思えばできる!やろうと思わなければ何も変わらない!」という力強い言葉に背中を押された思いだった。 (よしだ・ゆみこ)