ぐるっぽ(障害児者総合支援施設)の運営迷走は区の責任~第2回定例議会報告 その4~

 

昨年10月に開所した障害児者総合支援施設(愛称:ぐるっぽ)の前で、田中さやか(右)と吉田ゆみこ(左)。愛称の「ぐるっぽ」は「グループ」と「一歩、一歩」を合体させた言葉だということだ。地域に愛されながら大勢で一歩、一歩進んでいってほしいと心から願う。運営を迷走させた区の責任は重い。当初の理念に立ち返り、事業者、利用者双方にとってより良い運営を模索すべきだ。

今回は、品川区障害児者総合支援施設(愛称:ぐるっぽ)の運営についての質問のご報告をしたい。

同施設は、2014年の9月16日の厚生委員会から、それまで品川児童学園の改築計画として報告されていたものが初めて障害児者総合支援施設建設計画として説明されるようになった。2015年1月20日の厚生委員会では、運営事業者を全国公募とすること、選定事業者を指定管理候補者とすること、複数法人による共同運営事業者による応募も認めることなどの報告があった。その委員会において、区としての建物のコンセプトや区として求める必須事業や自由提案として出してほしい内容などが示され、同年7月27日の同委員会には、簡易型プロポーザル方式によって事業者の選定を行い、審査・選定会議を経て運営事業者を選定した旨が報告された。選定された事業者は4事業者によるフリーユニティという共同事業体であることもここで報告があった。

以上の区議会厚生委員会の議事録からは、区が当初目指した障害児者総合支援施設の形について読み取ることができる。

指定管理者制度は、行政の管理の代行という形で、事業の管理を建物と一体で使用許可権限も含めて指定された法人に委ねる制度であり、行政としての弾力的な運用は難しくなる。区民から見れば、大切な区民の財産を事業者が勝手に運営するのではないかという不安がある。その課題は制度ができた当初より指摘されていることだ。しかし、一方で、メリットも言われる。指定管理制度ができる以前の管理委託制度とは異なり、民間事業者も参入できるようになった。また、建物全体を一体型で管理することによって、民間事業者ならではの創意工夫が住民にとって良いサービスにつながる可能性がある。そのメリットを活かすためには、事業者と事業内容の提案の選定が非常に重要となる。

生活者ネットワークとしては、指定管理者制度には疑問を持っている。しかし、この障害児者総合支援施設については、指定管理者制度への課題は認識しつつも、品川区には障害児者の福祉事業を行う民間事業者が大変に少ないというもっと大きな課題があるため、本施設の運営事業者として全国的に評価の高い事業者が共同体を組んでのプロポーザル応募には大変期待をしていた。

ところが現在の障害児者総合支援施設の運営形態は、4法人の事業がばらばらになっており、メリットもデメリットも含めて「指定管理者制度による運営」とは言い難い。結果として、事業者の創意工夫も活かせているとは到底言えない状況だ。利用者の側からの不満の声も当然聞こえるが、一方で、事業者の側からのやりにくさの声も漏れ聞こえてくる。

今回一般質問で取り上げるにあたって2014年9月以降の当施設に関わる議事録を読み返した。その中での理事者の発言を読む限りでは、施設一体として指定管理者制度による運営に委ねるという認識が区にあったのか疑問に感じた。施設運営について、区がフリーユニティの内部で決めることにまで介入しているように読めてしまう点がある。それでは指定管理にはならずメリットは活かせない。介入したいなら当初から区直営にして、それぞれの事業を業務委託にすべきだった。当初プロポーザルを受け、審査をして指定管理者にふさわしいと判断した事業者と事を決定したはず。指定管理者制度を採用しながら現在のような形になってしまったことについて、区の責任は重いと考える。委員会議事録でも、当初の説明からどんどん運営の形が変わってしまうことについて苛立つ委員の発言も散見される。

生活者ネットワークとしては、フリーユニティを形づくる4法人には、今後ともぜひ品川区の中で事業を継続してほしいと強く願っている。そして今後も品川区の障害児者福祉事業には区外の事業者に参入してきて欲しいと思っている。その思いで質問に取り上げた。

区は再質問に対する答弁で、現状は「指定管理者であるということでのメリットが十分生かされていないと考えて」いると答弁したが、今指定管理期間は現状のままで事業をし、それ以後はまた指定管理者制度を活用して「建物管理を含む一体的な管理運営として公募をする予定」という。今、運営している4法人が事業継続の意欲を持てる公募になるかは不明だ。生活者ネットワークに届く障害児者とその保護者からの声は、今の運営事業者の事業継続を望むものがほとんどだ。なんとか、それらの声に応えられるよう働きかけていきたい。(よしだ・ゆみこ)