羽田新ルートは大義名分を失った!~第2回定例議会報告 その3~

7月10日に衆議院第一議員会館で開かれた、超党派国会議員による国交省との意見交換会に参加したやない克子(練馬生活者ネットワーク区議、中央)と村上典子(豊島生活者ネットワーク前区議、右)と吉田ゆみこ(左)。手に持っているのは自治体を超えて集めた「羽田新ルートの中止を求める」署名4467筆。この日提出された。

今回は羽田新ルートに関する質問についてご報告したい。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、国家間の往来は制限され、飛行機の便数は大幅に減っていたにもかかわらず、3月29日に羽田新ルートは本格運用が強行された。国土交通省によれば、この時点で騒音等の苦情は2,500件に上るとのことだった。質問した当時も現在も、便数は計画よりかなり少ないにもかかわらず、騒音による人々の暮らしへの影響は大きい。新型コロナウイルス感染予防策として定期的な換気が求められ、かつ多くの人が国や都の呼びかけに応えて在宅ワークを選択しているため、ストレスはより大きくなっている。騒音だけでなく、大きな機影が頭上を通過する様子はかなりの圧迫感だ。

羽田新ルートの前提となった経済活性化策の問題点も露呈した。新型コロナウイルス感染症が世界中に広がる様子は、グローバルなネットワークでつながることをひたすら追求してきた政策の負の部分を明確にした。
羽田新ルート計画について区民は「海外からのビジネスや観光客を呼び込むことによる日本経済活性化のために、羽田空港の機能強化が必要である。そのための発着便数を確保するためには23区上空を飛ぶルートが必要である」と説明を受けてきた。しかし、その経済活性化策が実は感染症も呼び込むことにつながってしまうのだ。
今回の新型コロナウイルス感染症が終息した後も、おそらく元のとおりには戻らないし、戻るべきではない。次のパンデミックも想定しておくべきだということに世界中が気づいたのだ。グローバルなつながりそのものは今後も大前提として維持しつつも、今回の経験を生かして、人の流れや原料調達の在り方も含めた新たな経済政策の在り方が模索されていかなければならない。
少なくとも今現在この羽田新ルートは大義名分を失っている。

以上のような認識に基づき質問した。
質問項目は主には次の3点。
①この時点での羽田空港の稼働率について区はどのように認識しているか?現状の便数であれば従来の海から入って海から出るルートで可能であると航空局長が国会で答弁したこと、ICAOが航空需要の回復には3年から4年かかると予想していること、等を踏まえて区としての判断を問う。
②区は5月20日に国に要望書を出しているが、意図が伝わりにくい文面であるため、改めて「区民や区議会議員の中には、『今は飛ばす意味がない』という声がある」ことを明確に表現した要望書を改めて提出すべきではないか?
③区として、新型コロナウイルスへの対応や当面の就航需要の減少を踏まえ、都心低空飛行ルートの運用は中止すべきと国に求めるべきではないか?

加えて補足的な質問として
a.1977年8月設置の羽田空港移転問題協議会は現在も続いているのか?
b.国土交通省は、これまで羽田新ルートの理由を経済活性化のためと区民に説明してきたにもかかわらず、突然「首都圏での騒音の共有」という理由を持ち出してきたことについて、区として説明を求めるべきではないか?の2点を質問。

a.羽田空港移転問題協議会は法律や条例に基づくものではないが現在も続いている、
b.「首都圏での騒音の共有」については改めて国に対して説明を求める、
と補足的質問には明確な答弁があったが、肝心の3点には相変わらずはっきりしない答弁に終始した。

①と③に対する答弁が、5月20日に区が国に提出した「当面の就航需要の減少を踏まえた一層の騒音軽減策の推進や新ルートを固定化しない取組についての実施」と要望したことに含まれるらしい。
また、②でもとめた「明確な内容の要望書」については、区としてはそれが「騒音軽減策、また新ルートを固定化しない取組の要望」ということらしい。そして国に対して届けるときに「従前ルートへ戻すべき」という意見も添えて区として要望したと言いたいらしい。

あくまで、国の方針には明確に反対できないようだ。しかし、区民の声や区議会での議員としての発言まで明確に伝えられないというのは不可解としか言いようがない。
自治体の長の責任として、区民の声に基づいた明確な発言を求めていくことが私たち議員の使命だ。
あくまで区としての「区民の声に基づいた羽田新ルート撤回」の表明を求めていきたい。(よしだ・ゆみこ)