品川区議会 第1回定例会報告~その1~

今年の品川区議会 第1回定例会は2月17日から3月25日の37日間の会期で開かれた。議会全体のご報告については品川・生活者ネットワークのご報告をご参照ください。
私、吉田ゆみこは、最終本会議において、建設委員会で不採択とされた陳情の中から2本をとりあげて賛成討論をおこなった。
この陳情は2本とも、現在品川区内あちらこちらで進んでいる再開発について、計画性が無いことや、その手続きについて不備があることを訴える趣旨だ。両陳情とも生活者ネットワークが訴え続けていることと合致していたため、討論をおこなった次第。
以下に、その本文を掲載するのでご参照いただければ幸いだ。

「品川・生活者ネットワークを代表して、陳情第14号 都市計画地区計画の決定に関する陳情と陳情第15号 品川区の人口計画に関する陳情に賛成する立場で討論します。
最初に陳情14号についてです。
陳情第14号は品川区内で行われた複数の再開発事業を例としてとりあげ、それらに関する都市計画地区計画の決定と、そこに至る審議のあり方について質問をし、回答を求めるという形で疑義を申し立て、よって適正な手順による都市計画、地区計画の決定を求める内容です。

具体的な疑義の内容として、環境影響評価の内容そのもの、およびその環境影響評価に対する審議のあり方、また本年1月13日に行われた品川区都市計画審議会においては多くの区民からの反対意見に対して、本来専門的な知見によって審議をすべき専門委員から何ら意見が出されないまま審議が終了してしまったことについて具体的に指摘がされています。
つまりは、都市計画審議会が多くの反対意見にも関わらず計画決定という結論を出すのであれば、「この事業を実施すれば多大に環境に悪影響を及ぼすのではないか?」という意見に対して、何らかの反論を示すべきであったという指摘です。

品川・生活者ネットワークとしても1月13日の品川区都市計画審議会での議論のあり方については、同様の疑問を持っています。

更に陳情者は、そもそも環境影響評価で採用されたデータそのものにも疑問を呈しています。具体的には風環境をとりあげ、その評価に使われたデータが古いデータであること、地上140mの建造物の影響審査であるのに地上72mでの検査数値を用いていることを指摘しています。
さらには一般環境や交通量による環境影響評価についてはコロナ禍によるまん延防止重点措置期間や、緊急事態宣言下の交通量の少ない時期のデータを用いていることなど、具体的に指摘しています。

陳情審査の議事録を確認したところ、理事者からは環境影響評価の主体は東京都である、ということが答弁として示されていますが、評価の主体は東京都であっても、その影響を直接受けるのは品川区民です。品川区の行政として東京都が進めた環境影響評価の結果は品川区民や品川区の環境を守る視点で精査し、活かすべきと考えます。
陳情者は、道路環境影響評価の手法について2021年の最新版を用いずに2012年版を用いていることなども指摘しており、その理由は品川区としても東京都に対して質すべきだったのではないでしょうか?
そして陳情者の指摘に対し、建設委員会での陳情審査の中で明確な答えを示すべきであったと考えます。

品川・生活者ネットワークとしても、再開発事業の環境影響評価についてはこの陳情で取り上げられているものに限らず、疑問を感じることが多く、本陳情の訴えは採択に値すると考えます。

次に陳情15号についてです。本陳情でも、陳情者はやはり区内いくつかの再開発事業を事例に挙げています。容積率を大幅に緩和した野放図な再開発によって、流入人口が大幅に増え、その実態に対して品川区が提供すべき学校・病院などのサービスの提供が足りていないこと、また武蔵小山駅の混雑を例に挙げて、社会的なインフラの整備も追い付いていない実態を指摘しています。それらを根拠に品川区の再開発事業による人口増に関する計画の不備を訴え、適切な人口計画を見込んだ再開発を求める趣旨の陳情です。

品川・生活者ネットワークは、これまでも議会質問の中で、再開発などのまちづくりにおいては、先に品川区が行政として提供すべき、保健センター・保育園・小中学校などの社会的資源の提供能力を先に算出し、それに見合った開発を行うべきであることを主張してきました。
駅の混雑については他会派の議員からもたびたび質問に取り上げられています。駅の混雑の解消は鉄道事業者の問題ですが、品川区が行う再開発事業が影響するのは明白であり、品川区が開発を計画する際には鉄道事業が提供可能なサービス量も当然考慮すべき事項です。

陳情者は、大幅な容積率緩和によって人口増を促してきたことで、学校や保育園の不足を招き結果として今は容積率緩和の方向を見直ししている他区の例を挙げて、品川区にも同様に容積率緩和による再開発事業の方向転換を求めています。

品川区が行政としてどのような街をつくるかを検討する際には、先に提供すべき行政サービスを算出し、それに見合う提供能力を見極めてから計画すべきなのは区としての当然の責務と品川・生活者ネットワークは改めて主張し、本陳情にも賛同するものです。

以上の理由により、改めて陳情14号と15号に賛同することを皆様に呼び掛けて賛成討論といたします。」

討論の後、全議員があらためて賛否を表明したが、残念ながら過半数の賛同は得ることができなかった。しかし、考え方としては間違っていないと確信しており、今後も議会の中で訴えていく所存だ。(よしだ・ゆみこ)