教科書採択間近!「市民自治によって成り立つ社会」の価値を若い世代につなげたい

2015年7月5日 18時59分 | カテゴリー: 活動報告

教科書の法定展示に行ってきた。

4年に一度の教科書の選定の年を迎え、品川区では、ここにも右傾化の波が押し寄せている。品川ネットとしては何とかこの動きを阻止しようと考え、それにはまず市民の関心を喚起しなくてはと、大田ネットと共催で68日、講師に藤村妙子さん(公正な教科書採択を求める大田区民の会)を迎え、緊急学習会を行った。

学習会の中で、「自由社」「育鵬社」の教科書の記述を確認したが、本当に信じられないような記述が並んでいることに驚愕した。全体的に個人よりも国家が尊重されるべき、との主張が目立ち、第二次世界大戦前の国家主義に戻そうとするかのような内容だった。

その学習会で、「みんなで教科書の法定展示に出かけ、しっかり見て感想を書こう!」という呼びかけを行った。私もそれを実践すべく、品川図書館に出かけたわけだ。

◆中学校「公民」、自由社と育鵬社と併せて数社を読み比べてみて

会場では、公民の教科書に絞り、気になる自由社と育鵬社と併せて4~5社の教科書を読み比べてみた。残念ながら全部を読むわけにはいかないので、さらにテーマを絞り「男女平等について」と「日本の国際貢献」のところを読んだ。

問題点は色々あったが、ここでは68日の学習会では、こんな問題もある、といった紹介にとどまった「男女平等」の視点を取り上げたいと思う。

まず、目次を確認すると、私が読んだ範囲では目次の項目として「男女平等」を掲げているのは自由社と育鵬社の2つだけだった。ちょっと意外な感じがして本文を見た。ところが、だ。読んでビックリ! 特に自由社の記述が印象的だった。(メモしてこなかったのでやや不正確だが…)「女性の社会進出が進んだ結果、男女共同参画が言われるようになり…」という書きぶりだった。ここだけ抜いても分かりにくいかもしれないが、「社会進出が進んでしまったのでやむを得ず、男女平等…」という印象に読めてしまう。さらに一応平等は前提としつつも、性差はあり、性差を無視して平等を強調しすぎると混乱が起きるとし、その一例として「トイレの表示を男女とも同色にした結果混乱が起きた」という事例が出ていた。

この事例について私は不勉強で聞いたことがないのだが、これはそもそも教科書に取り上げて男女平等の問題点とするほどの大事件なのだろうか?

たしかに性差はある。でも、それは女性の中でも、男性の中でも人によってさまざまな「差」があるのと同じ。今、身体に障がいがある人とそうでない人に「差」があるのと同じ。もっと言えば、人と人は皆「差」があるというのと同じではないか? それによって誰も「差別」されることはないというのが「平等」の考え方ではないか。

育鵬社の方を見ても、一応「男女平等」は言いながらも本音が違うところにあるように読める。どうやら、二社だけが殊更「男女平等」を目次の項目として取り上げているのは別の意図があるらしいことが読み取れた。

他の各社は目次では「人権」とか「平等」というくくり方で項目とし、本文を見ると小項目として「障害者差別の解消」などと並べて取り上げている。記述も「現在も依然として男女差別は残っていることを前提」としており、解消に向けるべきという論調だった。

◆メディアリテラシーに言及した教科書に好感

感想・意見表明文には、「男女平等」と「国際貢献」について、問題と思われる点について率直に書いた。そして一つだけ、ある教科書の良いと思う事例を取り上げて書いた。その教科書では最初の方に「メディアリテラシー」についての記述があった。社会について学ぶために新聞を活用することを推奨し、さらにはいくつかを読み比べることを勧めるといった内容だ。見出しのちょっとした違いが記事の内容について違う印象を読者に与える可能性があることなど、具体的な例を挙げながら複数の新聞に当たることの必要性を述べていて、好感が持てた。

もちろん、現今はメディアの発信そのものが危うい時代であり、新聞も必ずしも真実を伝えるものではない。しかし、それでもなお、新聞を例として教科書以外からも情報を得ることの大切さに触れた点、さらには「読み比べること」に言及している点は良いと思った。子どもたちには「自分の意見・考えを形成するに当たっては様々な意見を聞き、複数の視点を持つこと」の大切さを学んでほしいと、切に思うからだ。危ない教科書を見てしまったあとだけに、余計に強く感じた。

品川・生活者ネットとしては、まずは問題がある教科書の採用を何としても阻止したいと考えるが、今後に向けては「市民自治によって成り立つ社会」の価値を若い世代に対しても分かりやすく発信し、そして「それを実践する市民の一人として登場すること」を促すこと、かつそういう舞台を提供できる市民政治を実践し続けること、これらが使命だと強く思っている。<よしだ・ゆみこ>