2021年 品川区議会第1回定例会報告~その2 アリーナ建設に関する陳情審査報告
本定例会での総務委員会に、アリーナに関する陳情が2つ出され、その審査を行った。
本日はその審査についてご報告をする。その陳情とは以下の2つである。
⑵ 令和3年陳情第5号 品川アリ-ナ建設に反対する陳情
⑶ 令和3年陳情第7号 品川区庁舎建て替えにあたり品川アリーナ新設を求める陳情
この2つの陳情は一括で審議され、品川・生活者ネットワークとしては
⑵ 令和3年陳情第5号 品川アリ-ナ建設に反対する陳情 に賛成。
⑶ 令和3年陳情第7号 品川区庁舎建て替えにあたり品川アリーナ新設を求める陳情 に反対をした。
委員会審査の結果は、(2)は賛成少数で不採択。(3)は継続審査となった。
以下、品川ネットが(2)に賛成をし、(3)に反対をした理由を述べる。
1.区庁舎建て替えと広町再開発は表裏一体。そして「土地区画整理事業」で進む広町再開発。まだ具体的には何も決まっていない中でアリーナ検討はあり得ない!
(3)の陳情は区庁舎の建て替えを機会に一緒にアリーナを作って欲しい、と求める陳情だ。
生活者ネットワークとしてはアリーナ自体を否定するものではない。しかし、この陳情の内容は非常に具体的で規模もかなり大規模なアリーナを前提としている。
一方で、庁舎建て替えは広町再開発地区の中で行われることが想定されており、広町再開発は「土地区画整理事業」を活用する、ということが決まっており、再開発地区の中にある品川区の土地とJR東日本との土地の換地はその事業の中で行われるということだ。今はっきりしているのはそこまで。その換地によって区の土地がどの程度の広さになるかはまだ決まっていない。
そんな状況で、庁舎建て替えと大規模アリーナ建設を一体で行うためには、場合によってはJRの土地を品川区が取得しなければならなくなる可能性を意味している。他者の土地の所有権取得については品川区としてその可否を審議する場が設定されるべきだ。他者の土地取得を前提とする可能性がある陳情には賛同すべきではない。
2.アリーナの受益者はだれ?もしアリーナを建設するとしてもどんなアリーナにするかは一部の人が勝手に決めてはならない!
(3)の陳情には賛同者の署名が添付されていた。アリーナを望む区民が大勢いることは理解できる。
しかし、その望みに託す夢は百人百様だろうと想像する。例えば「良い環境で品川区民がスポーツをすることができたら良い」という区民は多いだろう。また「たくさん観客が収容できるアリーナを作って、プロスポーツチームの試合を品川区で楽しめたら良い」と夢を描く人もいるだろう。
前者が望むものはそれほどの規模は必要としない。区民としてはできるだけ安い料金設定で、回数を多く使いたいと思うだろう。一方で後者はかなりの設備投資を必要とする。それを回収して運営していくためには、収益を上げる使い方を前提とする。
これは、アリーナの「受益者」をどのように設定するかの問題だ。本陳情の内容は後者を前提としていると読めるが、もし、品川区がアリーナを作ることがあっても、そのアリーナの受益者をどのように設定し、どういう運営をしていくかは区も区議会でも多くの議論が行われるべき問題だ。それを決めるのは一つの陳情審査の場であってはならない。その意味でもこの陳情に賛同はできない。
ちなみに大田区にはアリーナがあり、指定管理者制度を使って民間事業者が運営し、事業的にはうまく成り立っていると聞いている。が、使用料が高く、一般区民のスポーツの場としては使いにくいそうだ。
3.ハコモノ行政は撤退の時!アリーナに限らず大規模な施設は採算がとれず、様々な自治体で進む見直し。今、優先すべきはアリーナではない!
陳情(2)の方に示されているように、今、大規模な施設についてはなかなか採算が取れず、事業そのものの見直しや撤退が進んでいるのが現状だ。経済が上向いている時なら、税収を投入してでも継続ということがあったかもしれないが、今はそのような時代ではない。まして、新型コロナウイルス感染症拡大が止まらない今、税収は減収が明らかであり、一方で出動すべき財政は多い。今、優先すべきはアリーナではない。
以上が、反対した理由だ。
生活者ネットとしては、そもそも、区庁舎建て替えや広町再開発も急ぐべきではなく、そこにかける費用があるなら感染症対策と感染症の影響で困難な生活を強いられている人たちへの支援に充てるべき、という考えだ。また今後もし、広町地区の再開発過程で土地の取得をすることになっても、その土地を活用する優先順位は、圧倒的に足りていない高齢者福祉や障がい者福祉の施設に充てられるべきだ。
いずれ、アリーナ建設が検討されることがあるのかもしれない。しかし、少なくともそれは今ではない。(よしだ・ゆみこ)